昔、私は妻が大学で学んでいた漢方薬について、とても懐疑的なイメージを持っていました。製薬会社で新薬開発の研究をしていた私にとって、漢方薬というのはほとんど効き目のない気休めくらいにしか思えなかったのです。
ところがこの考えが180度変わる出来事がありました。あるとき、私は急に激しい下痢で動けなくなってしまいました。今考えるとおそらくノロウイルスに感染したのが原因だと思います。そのとき数日間下痢が止まらず、体がだるくて座ることもできなくなったのです。心配した妻が先生に相談して、ある漢方薬を私に勧めました。私はそれが効くとは思えませんでしたが、藁にもすがる思いでその薬を飲んでみました。その時の衝撃は今でも忘れません。あれほど苦しかった下痢が、たった一服の漢方薬でピタリと止まり、起き上がれる様になったのです。
この経験以降、私の漢方薬に対する認識は変わりました。製薬会社で新薬の研究をさせてもらっていた対象が肥満や糖尿病、痛風などの生活習慣病だったことから、薬の使い方と生活習慣の関係について学ぶ機会が多かった私は、漢方薬の作用もまた生活習慣に左右されることに気が付き、生活習慣の改善と漢方薬を組み合わせることで人が健康を維持するお手伝いができることを実感してきました。
私自身も以前は肥満症で血糖値や血圧、尿酸値が高く(BMI 29, 体脂肪率34%, 空腹時血糖 120, 血圧 100 – 155, 尿酸値 8.2)、健康診断のたびに医師から改善するように言われていましたが、自ら生活習慣を変えながら漢方薬を使うことで、今は全て正常値に戻すことができています(BMI 23, 体脂肪率14%, 空腹時血糖 97, 血圧 80 – 115, 尿酸値 6.8)。